水色
誰かの人生の最悪の悪役になったことはありますか。
誰かの呪いになったことはありますか。
私の放った言葉が、あの人の中に残り、あの人を苦しめ続けるんだ。
そう想像する。
そういう想像をすることを、人の気持ちを考えるともいうかもしれないけれど、それは遅すぎるし、そしてこういう想像は、おこがましいことでもあるかもしれなくて、さらに無責任性をも孕んでいるかもしれなくて。そんなことどっちだって関係ないのだろうけど。ただ頭をよぎったから考えてみただけだよ。
おこがましい、というのは、私の発言は他人にとってそれほどの影響力はないかもしれないのに、永遠に人を傷つける呪いと自らが思っていることが。あの人が私に言われたことなんてとうに忘れて、強く生きているなんて知る由もないけれど。
同時に、おこがましいのかもしれないと思うこと自体には無責任性も含まれている。あの人が私に言われたことを忘れることなんて永遠にないとも一緒に思うから。
敷かれた祈りがあの人を救ってくれればいいと、一瞬だけ思った。お守りは、あとから来た呪いに勝てるのだろうか。そんなものは、そもそも波に掻き消されているだろう。
「私たちはお互い、誰かの呪いなんだね。でもいまそれを共有したから、私の呪いをあなたが誰かに、あなたの呪いを私が誰かにこれからかけることはなくなった。私たちが出会ったことをこれで正しくしよう」
小説の中で、ある女の子がそう言った。